役員対談

りそなでは、お客さまに提供する商品やサービスの開発において、デジタル技術を積極的に採り入れて成果を挙げてきました。銀行業界のなかで早い時期からこうした取り組みを進めてきたのは、りそな独自の企業文化が大きく関係しています。りそなホールディングス執行役の伊佐真一郎に、りそなの進めるDXの背景と成果、今後の戦略などについて聞きました(インタビュアー アジャイル推進室長 熊倉広将)。

  • 熊倉 広将
    カスタマーサクセス部 アジャイル推進室長
  • 伊佐 真一郎
    りそなホールディングス 執行役
    兼グループCDIO
デジタル機能を使って
お客さまに新しい体験価値を提供し
社会に貢献していきたい。

お客さま中心に物事を考えた結果
「りそなグループアプリ」が生まれた

りそながデジタル技術をいち早く積極的に採り入れることになった背景について教えてください。
原点にあったのは、お客さまに対して、よりよい商品・サービスを提供するために、どのようなことが必要なのかを考え抜いたということです。結果として、デジタル技術を活用した新しいチャレンジが必要だとの認識に至りました。デジタル技術の活用が先にあったわけではなく、あくまでお客さまの困りごとを中心に物事を考えた結果、手段としてデジタル技術を積極的に活用していこうという考えになったわけです。
スマートフォンで操作するバンキングアプリ「りそなグループアプリ」の成功が、デジタル技術活用の成果の一つになりました。
そうですね。2018年にリリースしたスマートフォンで操作する「りそなグループアプリ」は、大きな反響を呼び、2022年11月には600万ダウンロードを超えるまでになりました。アプリを開発していたのは、2016年の後半から2017年にかけてですが、その時はまだDXという言葉も使われていませんでした。DXを推進するためにバンキングアプリを開発したのではなく、お客さまのニーズに寄り添った結果、バンキングアプリの開発が必要だと考えたという経緯は、このことからもご理解いただけると思います。
「りそなグループアプリ」は、なぜお客さまの支持を得たのでしょうか。
店頭で行ってきたサービスをスマホ上で展開することに、お客さまの強いニーズがあり、そのニーズに応えるサービスだったことがベースにあります。そのうえで、お客さまの使い勝手がよくなることについて、徹底的にこだわりました。お客さまによって、銀行に求めるサービスは異なっているので、最初の画面から一人ひとり異なる表示になる仕掛けになっています。また、私たちは5年間で約150回ものアップデートを行い、1,000項目を超える改善をしてきました。お客さまに寄り添うために、常に柔軟に変化していくアプリであることが必要だと考えたからです。

PDCAを回しながら
DXを推進する体制

銀行はどちらかというと、カチッと固まったサービスの構築を好む“お堅いところ”というイメージを持つ方も多いと思います。りそなが変化に柔軟に対応できた秘密はどこにあるのでしょう。
お客さまから支持されなければならないという原点を考えれば、時代の変化やニーズの変化に敏感でなければならないのは、当たり前のことです。ただ、私たちの歴史を振り返ると、必ずしもその当たり前のことができていなかった時期もありました。20年前に公的資金をお預かりすることになった“りそなショック”を私たちは経験しています。その時に外部から経営トップを招き、「銀行の常識は、世間の非常識」という指摘を受けました。ここで奮起して、お客さまを原点に物事を考える企業文化が醸成されてきた経緯があります。りそなは「銀行らしからぬ銀行」という言葉をいただくことがありますが、前倒しに公的資金を完済できたのも、変化に柔軟に対応できる企業文化を創ることができたからだと思います。
デジタル技術を活用して、お客さまのニーズに寄り添うために、どのような組織を組んでいるのですか。
PDCAを回しながらDXを推進していこうと考えて、3つの部を置いています。DXに関する企画を行うのがDX企画部で、PDCAのP(プラン)に当たるところです。次にD(ドゥ)に当たる部門が、カスタマーサクセス部で、お客さまとの接点を考え、顧客体験を創造しています。C(チェック)に当たる部門がデータサイエンス部で、データに基づいて合理的・客観的に分析を行い、改善点をあぶり出して、次のA(アクション)につなげています。3つの部になっていますが、一体となって活動しています。
カスタマーサクセス部の中にアジャイル推進室が置かれています。この組織の狙いはどんなことですか。
銀行のビシネス部門の中に、開発組織を持つのは極めて異例だと思っています。銀行が提供するサービスと、お客さまが操作するインターフェースが表裏一体の関係になっている時代で、システム的な表現が、お客さまにダイレクトに評価されます。そこであえて、顧客体験を創造する部門にアジャイル推進室を置きました。ちなみに、アジャイルは開発手法の言葉ですが、スピード感を重視し、改善を重ねていくという意味です。これには失敗を恐れないという意味も含まれています。失敗したら、すぐに改善すればよいわけです。「ナイス失敗!」という言葉もあるくらいで、チャレンジしやすい社内環境だと思います。
DXを推進する部門の活動拠点について教えてください。
多様なお客さまがいらっしゃるので、私たちもいろんなバックグラウンドを持つ方と一緒にものづくりをしていくことが大切だと考えています。結果として、さまざまな外部企業さまと協業する形になっていて、“Resona Garage(りそなガレージ)”と呼ぶオープン・イノベーション共創拠点(東京都江東区木場)を設け、そこを中心に活動しています。服装も自由で、所属企業に関わらず、フラットな立場で意見を言い合っています。お客さまのニーズに応えるという共通目標に対して、誰がどこに所属しているなどということは、まったく関係のないことですからね。ダイバーシティという言葉を使うなら、まさにそういう環境になっているといえるでしょう。

外部企業とパートナーシップを組みながら
新しいチャレンジを加速していく

今、DX部門ではどのような取り組みが行われていますか。
さまざまな外部企業さまとパートナーシップを組みながら、新しいチャレンジを次々に行っています。例えば、2021年12月、りそなホールディングスは業界横断型の「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」の実現に向けたコンソーシアム*1を設立しました。また、2022年2月、多くの金融機関と異業種等外部企業を繋ぐ金融デジタルプラットフォームの提供を加速するため、合弁会社FinBASE(フィンベース)株式会社*2を設立しています。また、同年同月、国内随一のデータサイエンス集団を有する株式会社ブレインパッドと資本業務提携を結びました。既存の枠組みにとらわれず事業領域を拡大するとともに、地域活性化、持続可能な社会の構築を目指しています。さらに同年11月には、決済事業の強化と次世代Fintechビシネスの開発推進を目的に、株式会社デジタルガレージと資本業務提携を結びました。さまざまなパートナーと提携することによって、自社グループの限界を突破し、新しいソリューションを提供できます。こうしたワクワクするようなチャレンジを加速させていく取り組みを、今後もどんどん進めていきたいと考えています。
*1 株式会社りそなホールディングス、株式会社ジェーシービー、大日本印刷株式会社、パナソニック システム ソリューションズジャパン株式会社が参加。
*2 株式会社りそなホールディングス、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、日本アイ・ビー・エム株式会社の3社による合弁会社。
キャリア採用への応募を検討されている方に向けて、メッセージをお願いします。
よりよい社会づくりのために、私たちはどのように貢献できるのか、という点を考えて、金融という側面からそこに参加していきたいと思っています。それが社会の公器として私たちが担っている役割ではないでしょうか。そのための手段の一つとして、私たちは今、DXの推進に取り組んでいるわけです。こうした考え方に共鳴していただけるかというところが最も重要なポイントで、必ずしもこれまでのキャリアにこだわっているわけではありません。デジタルという機能を使って、お客さまに新しい体験価値を提供し、社会に貢献していきたいという熱い想いを持った方を仲間に迎えて、一緒にチャレンジをしていきたいと考えています。