パートナー対談
#CROSS TALK

フラットな関係で議論するうちに
ひと昔前の銀行とは異なる文化が育ってきた

“スマホがあなたの銀行に”をコンセプトとした「りそなスマート口座」のスマホアプリの企画、デザイン、開発からプロモーションまでを協業しているチームラボ株式会社。
“Resona Garage(りそなガレージ)”を拠点に活動するりそなの企業文化にも大きな影響を与えた、「エンドユーザのためなら、クライアントに遠慮せず発言する」を信条とするチームラボならではの考え方、議論の仕方、プロダクトの進め方、りそなの印象などについて、取締役のD.S.氏にお聞きしました(インタビュアー:りそなホールディングス カスタマーサクセス部 アジャイル推進室長 H.K.)。

  • H.K.

    カスタマーサクセス部
    アジャイル推進室長
    DX企画部アドバイザー

  • D.S.

    チームラボ株式会社
    Director,Co-Founder

talk 01 評論家ではなく、
手を動かしリアルを理解することが大切

H.K.

今日はチームラボのD.S.さんをお迎えしています。D.S.さんには、「りそなグループアプリ」を世に出すにあたって大変お世話になりました。チームラボさんは、“Resona Garage”と呼ぶオープン・イノベーション共創拠点(東京都江東区木場)におけるビジネスパートナーです。D.S.さん、出会ったばかりの頃のりそなの印象について教えてください。

D.S.

プロダクトのマネージャーとしてS.I.さん(現りそなホールディングス執行役)にお目にかかった時、「素人なんですが」と言いながら手書きのワイヤーフレームを持って来られたことに驚きました。

H.K.

チームラボさんはさまざまな大手企業とビジネスを手掛けていらっしゃいますが、それは珍しいことだったのでしょうか。

D.S.

すごく新鮮でした。しかも、いろいろ試行錯誤した形跡がある。大手企業のマネージャークラスの方が、自ら手を動かすということはあまりありません。私の勝手なイメージですが、銀行マンっぽくないなと思いました。銀行に限らず一般に大手企業の場合、プロジェクトでやろうとしていることについて、ロジックは示してくださるのですが、官僚が書いたような資料を渡され、中身はあまりないことが多いのです。りそなさんの場合、最初から手触り感があるというか、ユーザがどのように使うかということを想定して、いろいろ考えていらっしゃることが伝わってきました。ひと昔前まで、管理職になったら自ら手を動かす必要はない、という時代がありました。技術の進歩がゆっくりしていた時代はそれでもよかったのですが、今はそうではありません。インターネットが社会生活の中で当たり前のように使われる時代ですから、自ら手を動かし、リアルを理解することが重要です。

H.K.

昔ながらの銀行では、時代の変化についていけないという認識があります。一般論ですが、銀行というところは、意見は言いますが、自分で動いたり、責任を持って何かをしたりするという文化が育ちにくい環境だったと思います。評論家になってしまう人が多くなりがちな業種です。

D.S.

私も一般的な銀行というと、そういうイメージです。ところがりそなさんの場合、プロジェクトが動きだすと、「リスクは私が取ります」「そこは大丈夫。なんとかするから」といった侍のような言葉が出てくるわけです。私たちとしては、とてもやりやすいと感じました。

talk 02 キャリア採用の社員があまりの自由さに驚いた

H.K.

チームラボさんの特徴として、立場というかポジションがフラットですよね。

D.S.

そうですね。いわゆる役職というものがありません。

H.K.

だから、何かをやることに対して、意見を自由に言っていいし、私たちに対しても実際に意見をどんどん言ってくださる。

D.S.

エンドユーザのためになることなら、クライアントに遠慮せず意見を言うのが私たちの文化です。プロダクトのクオリティを高めるために、絶対に必要なことだと考えています。

H.K.

チームラボさんと毎日議論しているうちに、りそなの社員同士も見習って、フランクに意見を言い合うようになってきました。「その作業、意味あるの?」といった会話が飛び交っています。

D.S.

エンジニアライクになってきましたね(笑)。本当に必要なことだけやって、無駄をそぎ落としていくのがエンジニアの発想です。

H.K.

銀行員は店頭でサービスをやっていますから、お客さまから銀行員として見られていることを意識してきました。でも、“Resona Garage”での仕事は、ものづくりをしているわけで、環境が変わっているので、文化も変わってきたなということを感じています。この雰囲気を大切にしたい。ただ、最近は人数も増えてきたので、レイアウトを工夫するなど、試行錯誤を続けています。

D.S.

常にいろんなことをやり続けることが大切ですね。結果としてナレッジもたまっていくと思います。

H.K.

文化が変わってきたので、キャリア採用で新しく入社してきた方が驚いていました。前職がweb系の方でも、「前の会社では上司の言うことは絶対だった。りそなはあまりに自由なので、本当にこれでいいのか」と逆に悩んでいるくらい(笑)。

D.S.

りそなさんの中の組織までは見えませんが、外から拝見する限り、すごくいい雰囲気で仕事をなさっていると思います。

talk 03 リーダーの想いを共有しつつ自主的に考え、
行動することが大切

H.K.

プロジェクトの進め方について触れたいのですが、バンキングアプリを含めてアプリケーションの分野では、ここ数年、ずっとアジャイル体制で進めています。アプリサイド、サーバサイド、業務検討サイドを一体化していて、マルチベンダ体制で開発に取り組んでおり、各社でもスクラム*1を回しています。難易度の高いことをやっているようにも思うのですが、D.S.さんはどのようにご覧になっていますか。

D.S.

りそなさんの場合は、めちゃくちゃ上手くいっていると思います。スクラム同士とか、プロジェクト同士とか、必ず間に何か落ちる。それをお互いに拾い合っていかないと、上手くいきません。りそなさんと似た複雑な構造で仕事を進めているプロジェクトは他社でもあるのですが、上手くいっているところは、一人ひとりが自主性を持っていて、その人たちが間に落ちているものをちゃんと拾うわけです。

H.K.

リーダーの方の想いみたいなものがメンバーに伝わっていて、同じ方向を向いていることが重要なのかなと思います。「いいものをつくりたい」、「価値あるものをつくりたい」、「お客さまに喜んでもらえるものをつくりたい」といった、仕事の根底にある気持ちをみんなで共有できていることが問われている。

D.S.

そこは本当に大きい。チームラボもアウトプットが本当にエンドユーザにとって使いやすいのか、そこのクオリティを高めたいという気持ちだけで仕事をしています。おかげでそのほかの部分はカオスだったりしますが(笑)。

H.K.

バンキングアプリもリリースから5年たって、次のステージを検討していますが、D.S.さんから見て、りそなの取り組みはどんな風に映っていますか。

D.S.

アジャイル体制で、これだけスピーディーに改修を重ねていること自体がすごいこと。
また、りそなさんのようにリファクタリング*2について理解を示すクライアントはなかなかいません。「どんな機能が追加されるの?」と聞かれてしまう。りそなさんは、そこをきちんと理解している。

H.K.

リファクタリングはユーザから挙動として見える部分は変わらず、内部の仕組みを変える作業ですから、必要性が伝わらず反対されがちですよね。ただ、アプリを長く使ってもらう、広く使ってもらう、といった観点からは、内部の設計を変えることが重要ですと社内へ説明し、ありがたいことに理解してもらいました。最後にD.S.さん、りそなに期待することを教えてください。

D.S.

いやもう、このままでいてください(笑)。

H.K.

わかりました(笑)。今日はどうもありがとうございました。

アジャイル体制でのソフトウェア開発手法の一つ。少人数のチームで行う。開発期間を1週間など短期間に区切って、期間ごとに機能の追加や品質の向上を繰り返していく。

ソフトウェア開発において、プログラムの動作を変えることなく、内部の設計や構造を見直し、コードを書き直すこと。開発者にとって理解しやすい構造に変えることで、機能の追加やバグの特定が容易になる。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです。